大判例

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最高裁判所第三小法廷 昭和26(れ)2176 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

被告人Aの弁護人高見之忠の上告趣意は、後に添えた書面記載のとおりである。

同第一点について。

原判決は、判示に明らかなように、証拠によつて被告人に業務上横領の犯罪事実

を認定したのであつて、所論の主張する被告人が部落民から徴収した配給諸物資の

代金を、盆暮に納入するまで、これを自由に使用することができるという趣旨の事

実は、なんら認定していないのである。従つて所論憲法一三条違反の主張は、その

前提を欠くから、理由がない。

同第二点について。

憲法三七条二項は、裁判所は、被告人又は弁護人から申請した証人は、不必要と

思われる者まで悉く訊問しなければならないという趣旨でないことは、当裁判所大

法廷の判例とするところである(昭和二三年(れ)第二三〇号同年七月二九日判決、

集二巻九号一〇四五頁昭和二三年(れ)第八八号同年八月二三日判決、集二巻七号

七三四頁、昭和二二年(れ)第二五三号同二三年七月一四日判決、集二巻八号八五

八頁)。従つて原審が、弁護人から申請のあつたB外一一名の証人について、右B、

C、Dの三名のみを採用してこれを取り調べ、その余の九名の証人を必要がないも

のと認めて却下しても、所論のように憲法三七条二項に反するものではない。また

憲法三七条一項の「公平な裁判所の裁判」とは、偏頗や不公平のおそれのない組織

と構成をもつ裁判所による裁判を意味するのであつて、個々の事件につき、その内

容実質が具体的に公正妥当な裁判を指すものでないことも、すでに数次にわたる当

裁判所の大法廷の判例とするところであるから、原審において被告人申請の証人全

部を訊問しなかつたからといつて、憲法三七条一項に反することもない。(参照昭

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和二二年(れ)第一七一号同二三年五月五日判決、集二巻五号四四七頁、昭和二二

年(れ)第四八号同二三年五月二六日判決、集二巻五号五一一頁、昭和二二年(れ)

第二九〇号同二三年六月三〇日判決、集二巻七号七七三頁)

同第三点について。

被告人の自白と補強証拠と相まつて、全体として犯罪構成要件たる事実を認定し

得られる場合には必ずしも被告人の自白の各部分について一々補強証拠を要するも

のでなく、またかかる補強証拠は、被告人の自白した犯罪が架空のものでなく現実

に行われたものであること、即ち自白にかかる事実の真実性を保障し得るものであ

れば足りることは、当裁判所の判例とするところである(昭和二三年(れ)第七七

号同二四年五月一八日大法廷判決、集三巻六号七三四頁、昭和二三年(れ)第一三

四五号同二四年七月一九日第三小法廷判決、集三巻八号一三四八頁、昭和二三年(

れ)第一八六一号同二四年四月三〇日第二小法廷判決、集三巻五号六九一頁)。

原判決は、証拠として、被告人の原審公判廷における供述と第一審公判調書中の供

述記載の外、第一審公判調書中の証人Bの供述記載を含む三つの補強証拠を合せて

判示事実を認定しているのであるから、被告人の自白のみによつて、これを認定し

たものでなく、憲法三八条三項に違反したものではない。論旨は理由がない。

同第四点について。

所論の引用する判例は、村長が村の公金を受領して保管する場合において村のた

めにする意思をもつて、これを指定外の村の経費に流用したと認定された事案に関

するものであるが、本件は、原判決によれば、被告人が判示農事実行組合の生産部

長としてa部落民から徴収して判示農業会に支払うべき還元配給米代金を業務上保

管中ほしいままにこれを自己の用途に費消した事実を証拠により認定しているので

あるから、前示大審院判例は本件に適切でなく、判例違反の主張は成り立たない。

同第五点ないし第九点について。

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論旨は、結局原審の事実認定を非難するか、又は法令違反を主張するに帰し、刑

訴四〇五条に定める適法な上告理由といえない。

同第一〇点について。

所論は、原審の量刑不当を主張するのであつて、上告適法の理由に当らない。

以上の外記録を精査しても。刑訴四一一条を適用する必要があるとは認められな

い。

よつて刑訴施行法三条の二、刑訴四〇八条に従い、裁判官全員一致の意見を以て

主文のとおり判決する。

昭和二七年一月八日

最高裁判所第三小法廷

裁判長裁判官 井 上 登

裁判官 島 保

裁判官 小 林 俊 三

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